垂水に「和楽居(わらい)」というシェアハウスがあります。
シェアハウスというのは文字通り「住まい」をシェア(共有する)共同住宅です。
就寝スペースは個々となっていますが、キッチン、浴室、洗面、もちろんトイレ、通信。生活設備は全てシェアで成り立っております。
水道や電気、通信、ガスなどのメーターはそのシェアハウスに一つづつしかせっちされていないので、誰かが勝手にガンガン電気を使うなんて事は許されません。利用者一人一人が皆を思いやって初めて成り立つシステムです。素晴らしい生活スタイルだなーと思います。
そんなシェアハウスの中でも異質な光を放つシェアハウス和楽居には一つのテーマがあります。
それは「自然である事」。生活の中で使うものや建物の素材をできるだけ自然に還る物で作っていく事を心掛けているようです。
そんなシェアハウス和楽居さんで時々資材の調達や改造(基本セルフビルドで家のメンテナンスをされています!)のアドバイスをさせて頂いています。
今回は幾つかある和楽居のシェアハウスの中でも一番大きくて利用者が多い「オーガニック」と呼ばれる棟で、利用者が多い中どうしても困る一つしかない浴室。シャワールームの増設で協力させて頂きました。
ただ浴室を増やすというだけでは勿体無いので、増築の一部始終をDIY講習として工事のサポートに回って頂いて、大まか木造の建物がどういった構造と経緯で建っているのかを肌で感じて頂こうと思いシェアハウスの造作部長「ヒデキさん」に現場に入って頂きました。

設置する場所は裏の物置になっていたエリアです。すでに屋根付きで雨漏りの心配が無い事と既存の浴室と隣接しており設備的ロスが少ないのでこの場所になりました。
騒然となっていた荷物を退けて洗濯機を置くスペースを確保しつつ水道設備工事を事前に手配しておきました。素人作業で取り返しのつかない事もあるので、なんでもDIYでするのも良いですが必要な部分は専門の工事士にしてもらいましょう。

水道や電気の設備が終わったらユニットのシャワールームの設置です。これもメーカーの専属組み付け工事士が商品と共にやってきて指定した場所に取り付けてくれます。事前に配管しておいた給水管(湯水)と排水管にも繋いでくれます。

ユニットが設置できたらユニットを囲う壁や脱衣スペースの位置や範囲を床面に線引きします。壁の厚みなどを計算して壁が建つ下に基礎を建てていきます。今回は脱衣スペースの床の高さを出来るだけ抑えたかったのでコンクリート製のレンガ(高さ100厚み60長さ200㎜)で基礎を作りました。この時ボルトを出しておいて基礎の上に寝かす横材を固定する時に使います。

ここからいよいよ木工事です。
今回は荷重が掛からない(屋根や二階が無い)のでホワイトウッド2×1材(60×27㎜×4m)で骨組み作ります。本来ならば最低3寸角(90㎜角)などで土台や柱を立てます。
窓やドア、戸の位置に気をつけながら柱と間柱を建てていきます(今回は全て同じ材木)。垂直や水平は後々徐々に合わせていきますので、とにかく土台に柱を縫い止めていきます。
この時土台に柱を立てて電動ドライバーでビスを斜め打ちにしてとめてるのを見て「これだけで良いの!?」と驚いていましたが。本来土台や柱は90㎜角以上あり、土台に「ホゾ」と呼ばれる凹みを彫り込み、柱側にはそれに合う突起を削り出しておくのが本式です。今回の柱は壁の強度のみの目的なのでビス1本で充分としました。
昔は、家を建てる前に大工さんは工場でそのようなホゾ加工を事前にしています。それを「墨つけ」「キザミ」と呼びます。それらの加工された材木を現地で初めて基礎の上に並べて柱や梁をその「ホゾ」にはめていく事を「上棟式」棟(むね:屋根の1番高い所)を上げる式とよんで、簡単なお祭りのような事をしたんです。頭の中でイメージして上手にそのパズルが実際に組み上がったのをみれば、それはもう楽しい宴になった事でしょう。最近はコンピュータと機械で「キザミ」をするプレカットが多くなりこのような風習と感動は田舎の方だけになりましたが、まだ一部の地域では行われています。

少し間の写真がありませんが、柱の垂直が大体出たら床の骨組みを設置します。
希望するフローリングの貼り方向と直角に骨組みを取り付けるのがポイント。この時の骨組みを「根太(ネダ)」と言います。60×45㎜角もしくは45㎜角の米松材を使う事が多いです。湿気の多い場所なので強度重視で12㎜厚のコンパネベニヤを下地に貼る捨て貼り工法でシートフローリング(表面強化されたフローリング)を仕上げで貼りました。
床が仕上がれば出入口のアルミサッシ勝手口を取り付けます。今回は通路との干渉もあるので引き戸にしました。
サッシにはサイズが関東間用と関西間用があり関西間の方が広く設定されています。特注も出来ますが新設の場合は規格設定品の方が安いですし納期も早いです。
後はサッシの付ける位置の設定があります。壁の外側か内側かが、すなわち「外付け」「内付け」という言い方をしますが、アルミの形状が異なりますので図面等でしっかり設定しておきましょう。この辺りは「現場合わせ」では上手くいかないとこですね(笑)

今回は壁厚を小さくしているので外付け仕様にしました。
サッシが入ったらアンピから壁厚プラス10ミリ程度の幅でドア枠を入れておきます
ドア枠は出入口と浴室の折れ戸の2カ所で「縦勝ち」と呼ばれる組み方です。他にも「横勝ち」「トメ」とあります。

サッシ枠を入れたら柱の垂直を出しながら壁材を貼るための桟木(横材15×40㎜×4m)を1尺(303.333㎜)ピッチでとめていきます。
この時なぜ1尺なのかというと、次に貼る壁材(ここではラスボード910×1820㎜)の継ぎ目にちょうど下地の桟木が来るようにするのと壁の強度の為です。1.5尺(455㎜)ピッチでも継ぎ目はうまくいきますが石膏ボードの壁材がたわむ恐れがあるので、比較的強度の高い割り振りにしました。
使用するボードが「ラスボード」といって漆喰などの左官での塗り上げ仕上げ用に表面に凹凸をつけてある石膏ボードで、厚みが7.5ミリしかないのであまり粗い間隔の下地だと壁に手をついたり寄りかかっただけで割れてしまう恐れもあります。
天井も同じように1尺ピッチで下地を作ります。天井材は「ジプトン」の455×910の石膏ボードで表面が虫食い模様に仕上がっている物を使いました。半掛け(半分づつ継ぎ目をずらしてはる)で貼る場合は1.5尺(455ミリ)ピッチで下地を打っておきます。

骨組みが出来たら照明やスイッチの設備回路を取り付けたい場所に出しておきます。
いよいよボード貼りです。電動丸鋸で石膏ボードを切ると物凄い粉塵が出るので1メートルの定規と大カッターナイフでボードを切断します。
石膏ボードを切るときカッターナイフを力いっぱい押し付けると抵抗が大きくうまく進まないのと走り出したときコントロールが効かなくなり大変危険です。
切りたい所に定規をあてて、鉛筆で線を引くように軽い力で2~3回撫でるように切った後は、定規を使わず切込みの溝にカッターを滑らすように切りましょう。数回きって石膏ボードの厚みの3分の1程度切れれば山折にすることでパキンと折れます。あとは裏側の保護紙をカッターで切ってあげればカット終了です。ボード折り切りをした後は切り口に凹凸が少しできますので軽くカッターナイフでしごいて滑らかにしとくといいと思います。
今回は接着材を極力使わないということなので入れていませんが、桟に木工用ボンドを塗っておいてボードを貼り付けビス止めします。ビスの間隔は20センチ程度です。
基礎で水平。柱で直角をキチンと出していればこの時の石膏ボード貼りがとてもスムーズにいけますが、なかなか難しいと思います。
ボードのカットするときの寸法出しは両端と真ん中必ず三点の寸法を出す癖をつけておきましょう。石膏ボードは細長い寸法で切るのが難しいのでできるだけ大判になるように割り振りもよく考えて下さい。

石膏ボードが貼り終われば室内の隅々に「周り縁」と「巾木」を打てば大工工事の終わりです。
こういった化粧材はビスでは目立つので細い釘が良いと思います。エアータッカーなどでフィニッシュネイルで打てば尚綺麗に仕上がる事でしょう。
